今年の夏のOC模擬講義では,被服学ゼミ4年生2名が,十二単着装のマネキンとなってくれました。就職活動で忙しい最中,連日の猛暑の中,20キロを超える十二単の着装から平安風の静々とした歩き方まで,一生懸命に練習してくれてどうもありがとう。卒業してからも,折に触れて,あの日を思い出して頂けたらと思っています。
日本の民族衣装というと,冠婚葬祭のときに身につける“きもの”を思い描く方も多いのではないでしょうか。しかしながら,日本の衣服文化には確固たる公家装束の存在があって,現代にも継承されています。衣服史からみると,十二単は“きもの”以上に長い歴史をもっており,十二単もまた日本の民族衣装のひとつとして位置付けることができるのです。
十二単と藤女子大学というと,私は小説家の氷室冴子さんがまっさきに頭に浮かびます。彼女は,本学が誇る卒業生のひとりで,平安時代を舞台とした物語を何作か残しています。小学生の頃に読みふけり,平安時代に思いを馳せたものです。
架空の大納言家のお姫さまが,様々なトラブルを引き寄せて宮廷貴族社会を巻き込んでいく『なんて素敵にジャパネスク』,平安時代後期の『とりかえばや物語』を現代風にアレンジした『ざ?ちぇんじ!』,これらに出てくる装束の描写は,かつての小学生の心を鷲掴みにしてくれました。
もちろんのこと,氷室冴子さんの小説は藤女子大学の図書館にも所蔵されています。平安朝の世界に興味はあるけれど,古典を読むのは少々ハードルが高いと感じている方がいたら,いかがでしょうか,まずは皆さんの先輩の作品に触れる所から始めてみませんか?