ASEACCU(アセアック)は、もともとアジアのキリスト教系大学の学長が集まり、さまざまなことを話し合う国際会議でしたが、最近では、毎年、学生による会議を同時開催するようになりました。日本からは藤女子大学をはじめ、上智大学や南山大学からも学生が派遣されています。本学では、これまでフィリピン、インドネシア、台湾などに学生を派遣してきました。
学生会議のテーマになるのは、たいてい平和、多様性、差別など文化総合学科での学びと通じるものが多く、会議への参加経験は帰国後の学生生活におおいに役立てられています。会議で使われる言語は英語ですが、これまでたびたび文化総合学科の学生が派遣されています。今年は、2年生の千葉桃加さんが参加されましたので、以下にその報告をしてもらいます。
アセアックへの参加動機について教えて下さい。
まず、今年の開催国が韓国であったということです。私は韓国語や韓国文化に関心を持っており、高校時代から韓国語の勉強をしてきました。来年は、韓国に留学する予定です。
そうでしたね。本学協定校の韓国カトリック大学に行くのでしたね。
はい、幸運にも9月に行われた面接で派遣生の一人に選出されました。
おめでとうございます。ただ、アセアックは英語で行われる会議です。
心配はなかったですか?
「絶対大丈夫!」というわけにはいきませんが、ある程度はできるかもしれません。
アセアックへの派遣も英語で面接を受ける必要がありましたが、合格しました。
今年のテーマについて教えて下さい。
Reconciliation and the Situation in the East Asian Region’(東アジアの現状と和解)というものでした。私たちはこのテーマを念頭に東アジア諸国で問題とされていることについて、英語で意見交換しました。
チャレンジングなテーマですね。どのように話し合ったのですか?
私たちのグループには韓国、カンボジア、日本だけではなく、オーストラリアからの参加者がいましたので、かれらが少し離れた視点から私たちの意見を整理してくれました。話し合いをスムーズにまとめることができたのは、オーストラリアの大学生がいたからかもしれません。
具体的にはどのようなことを話し合ったのでしょう。
まず、母語が同じ人たちで集まり、話あいました。
私たちのグループでは日本におけるアジアからの移民ついて考えました。
話し合っていて感じたのですが、日本人は、普段の生活の中で外国人に対する世間の対応や政府の政策などについて、誰かと話し合ったり、調べることはあまりないように思います。
そうかもしれませんね。
私たちが着眼したのは、外国人移住者に向けた日本政府の政策が、どこまで機能しており、どれほどの人が認知しているか、ということでした。
その後、英語で行われた話し合いでは、具体的にどのような問題が指摘されたのでしょう。
外国人労働者の労働条件問題や金銭面でのサポートについて、たくさんの指摘がありました。周囲からの理解や協力が不足し、定められた政策や法律が十分に活かせていないのではないかと思います。
千葉さん自身はなにを最も大きな課題と考えましたか?
最も大きな問題点は無意識の差別であると考えました。
本会議の時、日本国内における差別問題を挙げようという話になったとき、一人が「在日朝鮮人」という言葉を使いました。すると同じ教室内にいた韓国人の男性が驚いた顔をしてこちらを見ていたことに気づきました。
私たちは無意識のうちに差別用語を口にしてしまいます。たいていは悪意を持って使っているわけではないのですが、それが外国人を傷つけたり、日本での暮らしを難しいものにしていることがわかりました。
どれほど良い政策を整えても、国民の中に相手の歴史や文化、言語などへの関心や尊重がなければ差別問題は改善しないと痛切に感じました。
日韓関係がぎくしゃくするなかでの渡航でしたから、考えることも多かったと思います。
はい、渡航の前から、日本への不買運動やデモがあることは知っていましたから不安でした。また、この会議に参加するにあたり、日本の立場は非常に難しいところにあることは学んでいたため、緊張感の強い渡航となりました。
街の人たちとの交流はありましたか?
実際に訪れた韓国は、想像やネット上で見ていた状態とは異なり、皆、私たち日本人に対し、韓国人と接する以上に優しくしてくれました。韓国人の友達もすぐにできたので、韓国語での会話を行うことも多くあったのですが、その中で一番印象的だった言葉は「国と国がうまく行っていなくても国民同士は関係がない。私は日本が好き」というものです。
メディア情報と実際は違うということも学んだのですね。
はい。メディアは連日、韓国が日本を批判していると報道していましたが、メディアが取り上げる韓国人と現地の多くの国民には、意識とのズレがあります。このようなことが逆に日本でも起こる可能性は十分にあるので、メディア情報を全て鵜呑みにすることは国際関係を悪化させるリスクが高いと思いました。
最後になりますが、この経験をどのように生かしていこうと思っていますか?
ジア諸国の学生たちと意見を交わし、互いの理解を深めることができたことは、本当に貴重な体験でした。会議で出会った参加者たちとこれからも連絡を取りあい、話し合ったことを生かしながら互いの国への理解を進めていきたいです。